ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた

著者は最新の研究成果に基づき、現生人類を侵略的外来種と規定し、かつてヨーロッパに住んでいたネアンデルタール人の絶滅が、現生人類のヨーロッパへの侵入によって引き起こされたと主張する。更には、現生人類がオオカミの家畜化により飛躍的に狩猟技術を向上させ、結果として現生人類と食料が競合するネアンデルタール人を含む肉食動物の絶滅を加速させたとしている。著者はその根拠として、以下のことを挙げている。まず、オオカミイヌと呼ばれる、オオカミがイヌへと家畜化される途中の種の化石がネアンデルタール人が絶滅した頃に、現生人類のものと考えられている遺跡から発見されたこと。次に、同じ頃にマンモスの骨を使って小屋を作るなど、現生人類が大量のマンモスを狩ることに成功していたことを示唆する遺跡が見つかっていることである。

現生人類のヨーロッパ進出がネアンデルタール人の絶滅に寄与したことについては頷くことのできる説明であるが、オオカミの家畜化がどのくらいの役割を果たしたのかについては、本書で提示されている証拠だけでは弱く、まだ憶測の域を出ていないように思われる。

どちらにしても、多岐にわたる分野の最新の研究成果を豊富に引用し、現生人類を侵入生物と規定しての論考は刺激的なものである。一方、関連研究を網羅的に取り上げようとする余り、細かい事実の羅列が続き、専門家でないと読みにくい箇所が散見された。さらにいえば、翻訳文がこなれていないために、更に読みにくいものとなっているのは残念であった。

ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた

ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた