アインシュタインの望遠鏡:最新天文学で見る「みえない宇宙」

天文学者によるダークマターおよびダークエネルギーに関する本。著者の研究テーマが重力レンズ効果を利用した観測であり、やはり重力レンズに関する事項に多くのページが割かれている。ただ、重力レンズに限らず、ダークマターおよびダークエネルギーに関連するその他のトピックも幅広く触れられており、ダークマターについて概観するには良い本。

一般相対性理論の導入から始まり、どうして重力レンズ効果が起きるのかを説明し、重力レンズ効果がダークマターの研究にどのように貢献しているかが述べられている。ダークマターの候補として、暗くて観測が難しい通常物質で構成される天体であるMACHOと、これまで知られている通常物質とはことなる物質であるWIMPが挙げられる。MACHOについては、重力レンズ効果を使ったMACHOの観測実験の結果、2000年にはMACHOだけではダークマターの質量をすべて説明できない(多くても8%から20%)という結論が出ている。また、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河団による重力レンズ効果の像から銀河団の質量分布が推定されており、ダークマターをWIMPであると仮定した時の予想と異なる分布が得られている。ダークマターの正体も含めてまだ謎は残っているのだ。

『宇宙を創るダークマター』は理論宇宙物理学者によるダークマター本であったが、『アインシュタイン〜』は天文学者によるダークマター本。『宇宙を創る〜』と比べると出版が2009年と5年ほど古いが、より広く浅く関連するトピックを取り上げており、ダークマターについて初めて読む人にとってはこちらの方が読みやすいかもしれない。

アインシュタインの望遠鏡―最新天文学で見る「見えない宇宙」

アインシュタインの望遠鏡―最新天文学で見る「見えない宇宙」