広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由

 

広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス

フェルミのパラドクスとは、いくつかの仮定を元に計算すると宇宙は宇宙空間通信の技術を備えた知的生命体で満ちあふれているはずなのに、地球外知的生命体からの通信はおろか、その痕跡すらも見当たらないのはなぜかという問題である。

ここで注意が必要なのは、「地球外生命体の痕跡が見つかっていない」ということを認めなければパラドクスとしては成り立たないということである。UFOの目撃情報などを地球外生命体の存在の根拠として認めるならば、パラドクスは存在しないことになる。

ウェッブはパラドクスへの解答として本書で50の仮説を検討している。仮説は大きく3つに分類される。一つ目のグループは、実は来ているというもの。つまり、地球外生命体は既に地球に達しているが人類がまだ気づいていないという説である。この場合、なぜ人類はまだ気がついていないのかについての説明が必要になる。二つ目のグループは、地球外生命体は存在するが、まだ地球に達していないというもの。ここでは、なぜまだ達していないかについての説明がなされる。三つ目のグループは、地球外生命体は存在しないという説である。

本書が面白いのは、ひとつの問題をめぐってこうも幅広い視点で議論ができるのかということが示されているところである。一つ目のグループの「実は来ている」説の多くはいわゆるトンデモ科学の領域に差し掛かっている一方、三つ目の存在しないグループでは、宇宙物理学や地球惑星科学から、生物学まで多岐に渡る分野に議論が広がる。

本書はフェルミの伝記と第三部の地球外知的生命体が存在しないという仮説だけでも読む価値が十分ある。

著者の結論も50番目の解答として論じられているが、それが何であるかは実際に読んで確かめられたい。